自主イベントの開催はスタートアップ企業に何をもたらすか? データ活用促進を目的としたイベント「01(zeroONE)」の裏側~元AWSマーケティング本部長小島英揮さん×primeNumber 田邊の対談
こんにちは、primeNumberです。2022年11月24日、イベント「01(zeroONE)2022 Autumn」を開催します。「01(zeroONE)」(以下01)は、「あらゆるデータをビジネスの力に」をテーマに、データ活用の知見やユースケースを公開するオンラインイベントです。企業の、そして日本市場のデータ活用促進を目指し、さまざまな情報を提供します。第2回となる「2022 Autumn」のテーマは「データマネジメントを考える1日」。企業がデータ活用を進めるファーストステップとして、その環境を構築・運用するための「データマネジメント」に焦点を当てています。
3月に実施した1回目には、1000名以上の方に参加エントリーをいただきました。2回目を目前に控えて、primeNumberのようなスタートアップが、どうしてこのようなイベントをやっているのか?そして1回目の手応えやそこで学んだことについて、元AWSマーケティング本部長であり、現在primeNumberの社外取締役を務める小島(おじま)英揮さんと、primeNumber代表の田邊の対談を紹介します。
小島さんのガレージオフィスで01が企画されるまで
田邊:primeNumberの主要サービスに「trocco®」という、データ分析基盤を作り、使う人を支援するサービスがあります。その有用性や、さまざまな社の取組みをたくさんの方に届けたいと思ったとき、広報やマーケティングの視点からはいくつかの手法・チャネルが考えられますが、どれも決め手に欠けるなと悩んでいました。2018年の10月にtrocco®がリリースされてから、約1年半の間に試行錯誤を重ねる一方で、トレンドとなっているDXという言葉の浸透と実態とのギャップがあること、我々が取り組んでいる領域そのものの認知は決して高くはないなということを、それぞれ理解に及びます。であれば、企業のデータ活用促進について幅広く情報発信できるような機会を「いっそ自分たちで設けてみるか」という発想に田邊が辿り着き、さっそく考えを聞いてもらおう!と小島さんのガレージオフィスに押しかけるところからこの話ははじまります。
小島さん:その話を初めてきいたとき、「いいじゃないですか、やった方がいい」と即座に言いましたよね。まず、未来のカスタマーと接点を作り、primeNumberのサービスをお伝えするのはビジネスではすごく大事です。その接点づくりに、primeNumberやtrocco®にとって良い場所が既にあれば、そこにたくさん出ていくというやり方がありますが、なかなかドンピシャな場はありません。データを扱うと言うと、だいたい皆さん、ストレージと可視化を想像します。trocco®みたいに、データを集めるサービスの重要性を理解してもらうには、既存の場所では難しかった。それなら、自分たちで場所をデザインした方が良いなと思いました。イベントをやるのが簡単というわけではないですが、それが近道だな、と。
次に、どのくらいの規模にしたいかという田邊さんの気持ちを確認しましたよね。
田邊:未来のカスタマーにprimeNumberやtrocco®を認知してもらい、必要な時に想起してもらうインパクトのあるイベントとなるためには、ざっくり1000人くらいが必要かなと思いました。
小島さん:1000人と決めたら、どうやるかを考えられます。それまでのprimeNumberのやり方だと、なかなかハードルの高い数字です。そこで、より多くの方に満足してもらうために、オンラインで、さらにツートラックで配信するフォーマットに決まりました。primeNumberやtrocco®をまったく知らないがデータ活用には興味を持っている方、データ活用を始めているがもっと良い方法を知りたい方、二段階のカスタマーを想定することで、対象の幅が広がります。イベント名が01なので、前者をセッション0、後者をセッション1にすれば良いのでは、という構想がでてきました。
(初回01のページ)
田邊:01と名付けたのは、データ活用をこれからはじめたい人や、もっと進めていきたい人たちが、いわゆるゼロイチを実現するための一助になれるようなイベントにしたかったからです。社としても、primeNumberと名乗ってますから数字をモチーフにできたことと、データは0と1の集合体である、なんて解釈も重ねることができて、すんなり固められました。
小島さん:データにまつわるイベント名を01にするのは、すごく良いなと思いました。既に他のイベントや類似のキャンペーンで使われているワードじゃないことも大切でした。01といえばprimeNumberの自社企画イベント、という風に第一想起される方が、絶対マーケティングしやすいです。
初の大型自主イベント。手応えを感じるところまで導いたものは何か?
田邊:小島さんのガレージオフィスにお邪魔して構想ができたのでスケジュールを引いてみたのですが、どう考えても半年はかかる計算でした。そこで3月にイベントを実施することをまず決めました。
起案した初期は大変そうな企画だぞ、時間もそんなにないぞ、という雰囲気をメンバーからも感じていました。なので、全体を進行していくマーケティングチームにはじまり、スピーカーに立って欲しい社内のメンバー、一緒に登壇を期待したいカスタマーに調整をお願いすることになるカスタマーサクセスのメンバー等々、日々多忙なメンバーに意義や目的を伝えて、彼らからのコンセンサスを得る過程を大切にしていたことを覚えています。
小島さん:実は、primeNumberくらいのステージにいる会社であれば、どこでもやれるのかもしれません。でも「難しいんじゃないか」と思って始めなかったり、実際忙しくてやりきれなかったりします。primeNumberのメンバーも、初めは半信半疑だったんじゃないかと。でもprimeNumberはやり切った。できたのはやり切ったからだと思います。
田邊:最終的にやり切ることができたのは、イベントそのものの文脈と公開されるコンテンツに対して、関わるメンバーはもちろん、社内全体で合理性が成立していたからかな、とは思っています。
小島さん:やり切ったことによってステージが上がったのではありませんか?
田邊:普段のセミナーも01以来、集客が100名行かなかったら「どうした?」なんて空気感になっています。
小島さん:そうなんです。全社で取り組むイベントは、インナーマーケティングの意味合いも非常に大きいんです。効率的にカスタマーを集めるだけなら、01みたいなイベントをやろうとはなりません。01で接点を持ったカスタマーが、実際に商品を使ってくれるようになるまでには、だいぶ時間がかかるんです。イベント運営に費用もかかりますし。でも、こういうイベントをやらないとメンバーの皆さんの「僕らはこういうカスタマーを呼ぶんだ」という視座が合わないんです。視座が合うと、現実のカスタマーとこれから集めたいカスタマーのギャップがわかり、初めて改善ができるようになります。
田邊:01を直接牽引したマーケティングチームのみならず、関連して動いたカスタマーデベロップメントチーム(サービスを直接販売するチーム)やカスタマーサクセスチーム含め、地力や連携力、そして小島さんも言及されている視座は間違いなく上がったと感じています。01の企画やキャスティング・運営をやり切り、カスタマーなどとのコミュニケーションを通して一定の手触り感を得られたことで自信にもつながったのではないでしょうか。その成果か、カスタマーの業種や規模のひろがりも目に見えて増えていきました。
一方で、成功と言い切るのは難しくて、実は第1回が終わった後の反省会は課題だらけでした。「課題を起点に」ではないですが、改善を繰り返していくことで、イベントの内容だけでなく組織そのものもより強くなっていけるのではないかな、と思っています。
小島さん:そうですね。次の2回目はスタートラインも、ずっと進んだものになるはずです。幸い、第1回で公開したかった情報はすべて出して、持っているカードをすべて使い切りましたよね。これからも、イベントをやるたびに、全力で取り組まなきゃいけない。そういう視座を持って、一体感を持って納期に向かって進んでいく。文化祭みたいですね。このイベントをつくる過程は間違いなくチームビルディングに繋がります。
田邊:primeNumberが持っている社内の繋がりは、組織が大きくなっていくにつれてどうしても薄まっていってしまうと思うんですね。でも、こういう全社イベントは、部署を越えてみんなの協力が欠かせません。そういう意味で、01はカルチャー維持の一端に寄与していると思いますし、これからも貢献しつづけてくれるのではないか、と感じています。
小島さん:通常の業務だと分業化されてしまいますが、全社イベントは共通言語、共通納期、共通ターゲットを持ちますからね。そのためにやり続けるわけではないですが。
データ時代において01の価値はどこにあるか?
小島さん:データが大事だという話は昔から言われていることですが、その成功例をみんなが聞きたがるってことは、まだまだデータ活用の成功者が少ない、ということじゃないかなと思います。たとえば、「DWH(データウェアハウス)を導入しました」「BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使って可視化しています」ということと「データを活用して業務をうまく回せます」というのは、少し違います。うまい回し方を聞ける場として、01に来ていただいた方は多いのではないでしょうか。
また、trocco®という製品の話ではなく、製品を使って成功した人の話にフォーカスしたのは良かったと思います。これからデータ活用を始める人には上手く始めた人の話を、もう始めている人にはもっとうまく活用する話を01では伝えていますよね。データ活用で成功している人の話を聞きに来たら、自然とtrocco®を含んだソリューションを選ぶことになる、という流れを考えていました。trocco®ってすごいんですよ、trocco®を好きになってください、trocco®の最新情報をお伝えします、という内容だったら、集客はものすごく大変だったと思います。
田邊:データを活用してどう成果を得られたかという話が伝えられるよう、コンテンツの内容はみんな気を付けていました。自分たちがtrocco®良いよ、というのは、当然じゃないですか。でも、外部の方に言っていただくためには、trocco®を用いた取り組みがうまくいっていないといけません。外部の方にご登壇していただけたことは、一定レベルでカスタマーに「価値を返し」、良いお付き合いができている証かな、と感じました。
小島さん:もちろん、trocco®自体の話を聞きたいという人に向けたイベントがあっても良いと思います。ユーザー会みたいな場で、trocco®の話をするという合意をとった上でお伝えするのは、どんどんやるべきです。
田邊:それは絶対やりたいですし、今まさにユーザーコミュニティの立上げも企画している最中です。
小島さん:01の中で、そういうセッションがあっても良いんです。でも、まだまだ皆さま成功に飢えていて、trocco®を知る前に、成功方法を知りたいというニーズが今ありそうです。すごく伸びしろがあるマーケットだと理解していますね。
11月24日の第2回は進化したチームでテーマも進化したイベントにします
小島さん:第2回は前回の焼き直しじゃないことがすごく大事です。フォーマットやオペレーション、集客のスケジュールの引き方などは、前回で分かりました。ですが、それをただトレースするのではなく、その先を目指す必要があります。もっと多くの人に知ってもらい、動いてもらうために、どれだけ進化しているか。「前といっしょだな」はやっぱり敗北だと思うので。
田邊:11月24日まではあと1週間です。社内のメンバーはこれでもか、というくらい頑張ってくれているので、僕としてはこれ以上求めるところはありません。1回目の反省も一覧化されているので改善すべく頑張ってくれています。あとは、配信当日まで、未来のカスタマーとのコミュニケーションをどう設計していくのかを詰めていかないといけませんね。一緒に頑張っていきます。
イベントを見てくださる方には、primeNumberのできることを、より広くお伝えしたいです。これまではtrocco®や「データ統合」というキーワードを中心にコンテンツをお伝えしていましたが、今回はもう少し領域を広げ、「データ統合」の周辺領域を含む「データマネジメント」や、データ活用の意味、教育や組織作りなどを取り上げていきます。幅広い観点からお伝えできるのは、会社としての成長だとも思っていますので、ぜひ期待していただきたいです。エントリー頂いた方には、データを活用し、ビジネスを成功に導いてもらえれば、と願っています。
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