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SaaS企業のパートナーセールス~強いチームを作る戦略と、プレイヤーが心掛けるべき4箇条

私たちprimeNumberは、SaaSの「trocco®」を提供しています。SaaSは直販営業が一般的ですが、primeNumberでは、プロダクトセールス(直販営業)とパートナーセールス(代理店営業)の割合が2対1。2021年度から22年度にかけて、パートナーセールスの受注数・新規MRRは400%以上となっています。

このような成果をあげるチームをつくるために、どのような戦略を取っているのでしょうか?また、プレイヤーはどのようなことを心がけるべきなのでしょうか?primeNumberのパートナーセールスを統括する下坂に話を聞いてみました。これからパートナービジネスを始めたい、自分もパートナーセールスになりたい、といった方の参考になれば幸いです!

※役職や業務内容等、すべてnote公開当時のものとなります



パートナーセールスチームを作る戦略

パートナー企業と協力して、より大きな付加価値をエンドユーザに提供する。ステークホルダー全員に価値を返せるように


――まずはパートナービジネスの概要から教えてください。

パートナーセールスは、パートナーの皆さまと協力をし、より大きい付加価値に変えた上で、エンドユーザ(パートナーの先に存在するクライアント)に価値を提供する活動です。「ただ単純に販路を広げる」「再販事業会社を増やす」といった活動はパートナービジネスではないと、私たちは考えています。そのため、パートナーの皆さまも含む各種ステークホルダーの状況を考えた上での行動が必要です。

――エンドユーザについては、ターゲティング等は実施するのでしょうか?

私たちprimeNumberが考えているサービスの想定ターゲットとパートナーのターゲットは必ずしも合致しません。パートナーの事業戦略、ドメイン戦略、得意分野、苦手分野などもあり、私たちが想定しているターゲットにアプローチできないこともあります。一方で、パートナーとシナジーを生むことにより、今までターゲットになっていない皆さまへの、アプローチも可能になってくるということになります。

このように、パートナーにより生じるシナジーが異なることをふまえつつ、マーケットへのホワイトスペース戦略を考えていきます。

――ホワイトスペース戦略について、もう少し詳しく教えてください。

私たちprimeNumberが置かれている状況や企業戦略、そしてあらゆるパートナーの皆さまが置かれている状況と企業戦略、マーケット状況等を考慮しています。

簡単な例をこちらでお伝えをすると、Industryカット、事業規模カット、ドメインカットなど。このような切り口から、どういった座組でホワイトスペースを埋めていくのか、逆に現状埋めることができないのか、あらゆる視点から検討したうえで実行戦略に落とし込んで行きます。

――具体的には、どのような視点から考えているのでしょうか?

たとえば、

・Vertical SaaSの事業会社の皆さまとはどのようなことをするとシナジーが生まれるのか
・Horizontal SaaS事業会社の皆さまとはどのようなことをするとシナジーが生まれるのか
・各種SIerの皆さまとはどのようなことをするとシナジーが生まれるのか

といった視点から、各パートナーセールスの担当者全員と考えています。

さまざまな視点から考え、全パートナーの皆さまに価値を返し、その先のエンドユーザに更に価値を返す、そして「あらゆるデータをビジネスの力に変える」といった我々のビジョンを達成することを念頭に置きながら、パートナービジネスを推進しています。

さまざまな業界の知識を持つメンバーを採用し、サポートすることで組織力を強化

――メンバーはどのように採用しているのでしょうか?

前提として、「お客さまがデータを使って課題を解決し、ビジネスを成長させること、私たちはそのお手伝いをすること」が、私たちが大切にしている価値観です。trocco®はあくまで本点を達成するためのツールに過ぎず、まずはお客さまの課題をしっかりと理解することが一番重要です。

こうしたことを踏まえると、お客さまの業務・産業に対する理解が重要になってきます。そのため、ITの知識だけではなく、さまざまな業界の知識を持つメンバーを採用して組織力の強化を図ることを重要視しています。

現に、パートナーセールスは私を除いて5名いますが、製造業向けの部品や完成機器販売、小売業、決済系サービス、建築業界向け等、幅広い産業で結果を残してきたメンバーが集まっています。

各メンバーの各種領域での知識・経験と、データ活用領域の知識・経験を組み合わせることで、さまざまな発想でお客さまへ貢献し、組織力を向上しながら邁進しています。

パートナーセールスのチーム

――アクションプランはどのように立てているのでしょうか?

具体的な内容についてはお話ができませんが、各メンバーはいくつかのパートナー企業について、Account Development Plan(ADP)というものを作成しています。ADPの雛型は、私の今までのエンタープライズ向けの営業活動や経験を元に作成しました。

ADPには、パートナーの組織構成図、事業計画、中期計画、ビジョン、マーケット状況、ステークホルダーなど、あらゆる情報が詰まっています。こうした情報をもとに、パートナーとどのようにマーケットに入り込むか、パートナーやマーケット(エンドユーザ)へ価値を提供していくかを検討し、アクションに落とし込んでいきます。

現在のprimeNumberのADPは3年後(※インタビュー公開時点ではFY25)までを意識しており、現場のメンバーが現在の対応状況と想像を膨らませながら作成していきます。チェックポイントとしては、年度、半期、四半期、月といった頻度でディスカッションのタイミングを設けています。

この取り組みは、初めは難しいと感じるメンバーがほとんどです。しかしながら、一歩一歩このような事を全メンバーが実行、想像し、遂行していくことができる環境を作ることで、組織・個人として強化を図っています。

――リーダーとしては、どのような動き方を意識しているんでしょうか?

私はトップダウンで戦略を指示するのではなく、考え方や思考のサポートを実施しています。もちろん、全体の整合性を取る必要がある場合は指示もしますが、サポートが主体となります。

言い換えると、メンバーそれぞれが担当しているパートナーと、どのようにマーケットを変え、企業の皆さまに価値を返していくのかを想像できるようサポートしています。また、検討内容が本当に理にかなっているのか、パートナーが求めていることなのか、エンドユーザにあたる企業が求めていることなのか、私たちが求めていることなのか、こういった観点もフォローしています。

組織をスケールアウトするために、それぞれがこのような観点を持ち、日々の仕事を「こなす」ではなく、いかに戦略的に遂行していけるようにするか、自身が責任をもって取り組める環境にできるか、私はこのような部分を大事にして、常日頃から全メンバーと話をしています。

この部分が、メンバーが話している弊社のパートナーセールスにおける、裁量といったところに繋がってくるかもしれません。そして、大きな結果を生み出すことができている一つの要因ではないかと考えています。

プレイヤーが心がけるべき4箇条

――ここまではチーム全体の戦略についてお話いただきました。ここからは、各プレイヤーが心がけるべきことについて、教えてください。

primeNumberのパートナーセールスが常日頃から心がけている数多くの中から、本日は4つほどピックアップしてご紹介できればと思います。

1. パートナーが何をしたいのか、心から、明確に理解する

直販もですが、パートナーセールスでも自分(個人・primeNumber)よがりの考えでは、成功は難しいです。あらゆるステークホルダーの皆さまの考えを踏まえて、推進することが重要です。

パートナーに限っていえば、「今何が課題なのか」「会社をどのようにしていかなければならないのか」「弱みは何なのか、強みは何なのか」等など、あらゆる理解が必要です。

primeNumberとしてどのようにパートナーに価値を返せるのか、シナジーが生まれるのか、マーケットに価値を返せるのかは、パートナーを理解してはじめて考えられます。「パートナーの理解」はパートナーセールスの基本のキでもあり、教育方針でもあります。これがなければ、パートナーセールスとして大きな成功は残せません。

2. 幅広い視野を持つ

パートナービジネスの根幹は「パートナーの皆さまと協力し、より大きい付加価値に変えた上で、エンドユーザに価値をご提供する事」です。

そのため、1対1のパートナリングではなく、複数のパートナーの皆さまと協創するという視点もとても重要になります。このような考え方は、多くの企業でエコシステムの一環として推進されていますね。1対1だけでのパートナリングではなく、1対nのパートナリング、即ち複数のステークホルダーを巻き込んだパートナリングを実施することで、より大きなシナジーを生み出す事ができるようになります。

primeNumberの主要サービス「trocco®」のビジネスは、あらゆる企業・パートナーの皆さまとのかかわりが多く、エコシステムを作りやすいといった特徴があります。こうした特徴もprimeNumberの強みではないでしょうか。

また世間一般的には競合のように見えるような関係の皆さまも集め、時には議論・お話をするような場を設けることも可能です。こうした場を通じて、マーケットに対して、いつもとは違った軸から、より価値のある情報をお渡ししていくことができます。

primeNumberの企画イベント01(zeroONE)では、
パートナーであるAWSとSnowflakeをお呼びしたセッションを実施しました

時にはとても広い視野でのパートナリングを考える事もあります。

私たちの提供するtrocco®は、Hyper Scaler(AWS、Google Cloud、Microsoftなど)の皆さまや、Snowflakeの皆さまが提供するDWH(データウェアハウス)と親密な関係性があります。また私たちは今現在、海外にも羽ばたいています。

このような状況では、いかにこのようなリーディングカンパニーの方々とお話しながら、各国・全世界のマーケットを進化させていくのか、企業の皆さまに変革をもたらしていくのかといった、とても広い視野が重要になります。

3. まず一件目の実績を作る

パートナリングにおいて難しいフェーズは、会社の置かれている状況下によって大きく変わりますが、私たちが常に重視しているのは、0→1のフェーズです。0→1のフェーズの中でも、パートナーの皆さまと、1件目のOpportunityの作成、Closed Won Dealをいかに作るかに焦点を当てています。

パートナーの皆さまも、私たちも何もかもが初めてです。その中でいかにお互い歩み寄り、互いを理解しながら推進していくかで、このあとのフェーズの進み方・スケールアウトの仕方などが大きく変わってきます。折角のご縁の中でのお付き合いなので、互いに1件目をいかにスピーディ且つ、具体的に取り組んでいくのか、ここに重きを置いています。

本点は言葉には表せないぐらい大変なこともあります。

4. サービスの進化への貢献

私たちのサービスは日々進化を遂げる必要があります。単純な進化ではなく、意味のある進化・ダイナミックな変化が求められます。

パートナービジネスは、通常1対n対nのビジネスモデルとなるため、パートナーセールスはより多くの、ご要望・マーケットニーズなどをつかむことができます。こうした情報をつかみ、社内のメンバーにしっかりと伝えていくこと、このような姿勢を通じて、サービスの価値を向上させ、パートナー・エンドユーザ・マーケットに多くの価値を提供していくことが重要と考えています。

――ありがとうございます。最後に、このインタビューを読まれる方に向けてコメントをお願いします。

私がパートナーセールスを統括する上で大切にしていることをお話しました。部分的な内容もあり、かなり端折っているのですが、これからパートナーセールスの組織を作られたい方、1メンバーとして頑張りたい方の参考になれば幸いです。

また、このような方針や実施内容に共感し、私たちのパートナーセールスのチームに加わりたいという方は、ぜひカジュアル面談からでもお話ください。

――ありがとうございました!